デンタルアドバイス

● 学校歯科健診

春の学校歯科健診が終わると多くの子供たちが歯科検査表をもって歯科医院を訪れます。レントゲン撮影などを行いご父兄の方に、お子さんの口腔内の状態を説明すると、歯科検査表の結果と異なることも少なからずあり「学校歯科健診ではむしばなどなかったに・・・」「先日経過を見ましょうと言われた歯がムシ歯かもしれないと検査表にあるけど・・・」というようなご意見をいただきます。ここで確認しておきたいことは学校歯科健診はスクリーニング(選別)検査であるということです。従って歯科医院でのレントゲンなどを用いた精密検査が必要となり、その結果が異なることは当然起こりうることだということです。

学校歯科健診では以下の8項目を検診します。
  1. 歯の崩出状態(現在歯)
  2. 顎関節の状態
  3. 歯列(歯並び)と咬合(噛み合わせ)
  4. むし歯
  5. 要観察歯(CO)
  6. 歯周疾患(歯周病)
  7. 歯周疾患要観察(GO)
  8. 児童虐待と歯および口腔
ここでは 要観察歯(CO) 歯周疾患要観察(GO)児童虐待と歯および口腔について説明します。

要観察歯(CO)
日本学校保健会の「児童生徒の健康診断マニュアル」では要観察歯(CO)を次のように定義づけています。
「視診ではむし歯とは断定出来ないが、初期病変の疑いのある歯をCO(要観察歯)とした。具体的には小窩裂溝では褐色裂溝、平滑面では白濁(班)または褐色班として観察される。COはむし歯と断定出来ないがむし歯の初期病変の疑いがあり、引き続き口腔環境が悪ければむし歯に移行する可能性が高く、また逆に口腔環境が改善されれば健全な状態に移行する可能性のある歯である。要観察歯(CO)は、現在むし歯と断定出来ないが初期病変の疑いがあり、引き続き口腔環境が悪ければむし歯に移行する可能性が高く、また、逆に口腔環境が改善されれば、健全な状態に移行する可能性のある歯である。そこで要観察歯(CO)は検診後の事後措置が重要になり、継続的な観察を行うため、個別の健康診断や臨時健康診断を行うことが必要である。」としています。
 要観察歯(CO)の継続的観察により適切な事後措置を行うためには「かかりつけ歯科医」を持つことが重要となります。歯科検診表の意味合いをよく理解していただき、ご父兄様とかかりつけの歯科医師、歯科衛生士が協力し要観察歯(CO)をむし歯に移行させないことが大切です。

学校歯科健診で要観察歯(CO)と診断された歯牙です。清掃状態や生活習慣の改善など父兄とかかりつけの歯科医院が協力してむし歯に移行させないことが大切です。

学校歯科健診で要観察歯(CO)と診断された歯牙です。良く見ると左下の奥歯の間の色が少し変わっている事がわかります。このように僅かな変化も見落とさないためには健診現場にも適切な照明環境がが必要となります。私の開業している地区では行政の協力を得て歯科医院と同様の照明(無影灯)を用意していただきました。この照明のおかげで健診レベルも格段に上がったと自負しています。



レントゲン診査では肉眼所見では僅かな色調の変化としかとらえる事ができなかった歯の間に、すでに治療の必要のあるむし歯がある事がわかります。

● レントゲン診査の必要性

ワールドカップの初戦、日本がオーストラリアに残り時間僅か10分から3点を取られ逆転負けした翌日、知り合いの衛生士さんが「左の奥歯が痛くて歯をかみ合わす事が出来ない」と来院されました。口腔内を拝見すると虫歯などはなく肉眼所見では特に問題はないようでしたが(図1、2)、

図1
お口の状況
多少の歯列不正をみとめますが、清掃状態もよく特に問題もないように見えます。

図2
痛みの原因と思われた左下第二大臼歯の内側に様子 歯と歯の間に僅かなプラーク(歯垢)があり、歯肉に発赤、腫脹がみとめられますがこれだけで原因を特定する事は難しい。
触診から左下の第2大臼歯がわずかに動揺し、咬合痛をみとめました。何か原因として思い当たる事はないか確認したところ、「昨夜の応援で歯を食いしばり、また逆転負けで悔しさのあまり良く眠れなかった」とのお話でした。レントゲン撮影を行ったところ図3、4に示すような状態でした。肉眼では確認出来なかった左下第2大臼歯の遠心に大きな骨欠損を確認する事が出来ました。

図3
パノラマレントゲン写真 全体の様子を診査するために撮影します。

図4
デンタルレントゲン写真 部分的な歯牙や骨の状態を診査するために撮影します。奥から2本目の歯に肉眼では確認出来ない骨の吸収像がみとめられます。
 咬合性外傷と食片圧入を疑い、咬合状態を確認し噛み合わせの調整から始める事にしましたが、あらためてレントゲン診査の重要性を再確認しました。歯科医院では主に歯牙や歯槽骨といった歯と歯周組織の病変を対象に治療を行います。これらの変化にはレントゲン診査による診断が必要不可欠となります。
 しかし、重要な情報を得るためとはいえレントゲン撮影による被爆の影響を心配される方もいらっしゃると思います。我々人間は日常生活においても地球から自然放射線被曝として約2.4mSv/年 被爆しています。歯科でのレントゲン撮影での被爆量は、その数百分の一ですから自然被爆よりきわめて小さいものと言えるでしょう。
 したがって、歯科でのレントゲン撮影による被爆の影響は非常に少ないものとして考えられますが、当院では防護エプロンを着用し放射線防護のうえ撮影を行い被爆量の軽減に心がけています。